悪魔城年代記 悪魔城ドラキュラ
あくまじょうねんだいき あくまじょうドラキュラ ←BACK ![]() ![]()
「月下の夜想曲」で獲得した新規ファンのため(…かどうかは分かりませんが、たぶんそういった目的でしょう)、「悪魔城年代記」シリーズとして過去の作品を移植する企画ができたようです。 その第一作目は、X68000で発売された「悪魔城ドラキュラ」です。 X68000版は初代のリメイク作品ですが、より練られたバランスとグラフィックで、ファンの間では一位二位を争う傑作です(あくまでX68000版の評価です) この移植版では、イメージイラスト及びジャケットデザインを「月下の夜想曲」に引き続き小島文美氏が担当しており、氏が描き起こしたホモン=ホルモンチョ(※)とドラキュラ伯爵を使用したアレンジモードも収録されています。 (※)当然ながら公式名称ではない。
前述の通り、X68000版を(表上は)移植した「オリジナルモード」と、一部を変更した「アレンジモード」の二つが用意されています。 アレンジモードには難易度設定やタイムアタックモードが追加されており、オリジナルの難度では手に負えない人にもとっつきやすくなるように変更やリプレイバリュー この辺りの配慮はユーザーのことを考えた良い点であると言えるでしょう。 どうせなら全体をアレンジして欲しかったような気もしますが、そこまで望むのは贅沢かもしれません。 さらに、曲はすべてアレンジされ、エンディングはCGムービーに差し替えられています。 しかし、妙に軽いトランス調のアレンジはゴシックホラーのゲームには合っておらず、ムービーも2Dのドット絵グラフィックとはまるで調和していなかったりと、浮いている感や取ってつけた感が半端ありません。 しかもムービーにもその後のスタッフロールにもホモンはまったく登場しないため、城の崩落に巻き込まれて死亡したようにしか見えない…。 登場しない理由も、「わざわざホモンのCGモデルを起こすのは面倒くさい」という手抜き思考が透けて見えるためにとっても白けます。 一方、再現度が重要なオリジナルモードはと言うと…(次項)
完全移植と呼ぶには程遠い、というのがクリアしての感想です。 縦横比率の関係か、ステータス(画面上部)部分を半透明にするという方法を取ったようですが、これが非常に見づらい。 これによって重要なサインを見逃してしまう(見えない)場面もちらほら…(ブロック1や5のボスなど) また、敵もパターンが単純になっていたり(本来なら攻撃をギリギリでかわす敵も、まったく避けなかったりする)、全体的に行動が遅かったり等、歪なバランスです。 オリジナルモードがクリアできるようになったとしても、本当のオリジナルでは通用しない場面は多々あるため、過度の自信を持ってはいけません。あくまで「オリジナルに挑戦できる最低限の基礎ができた」くらいに考えるべきです。 むしろ変な癖がついてしまうので、あまり深く慣らしてしまうのは危険です。 その他、問題なかった部分なのになぜ変えてしまったのだろう? と思える違いが多く、X68000版に慣れているほど細かな不備にストレスがかかります(詳細はデータ集を参照) しかし、一番の問題は音が飛ぶという、商品として欠陥以外の何物でもないミスでしょう(次項)
この作品では一部の曲において、途中で音が飛んでしまう現象が起きます。 ゲームが進まなくなるほどの重大なものではないにせよ、このような不完全なものを出されてユーザーが黙っているはずはありません。当然、回収して直せという苦情が続出しました。 しかし、コナミ社の回答は「そのような現象は確認できない」の一点張り。 試せば簡単に分かる欠陥すら認めようとしないコナミ社のずさんな対応に、ユーザーは怒り心頭。 対応に時間がかかったものの、結局は修正に応じたようですが、修正されて戻ってきたものにも新たな音飛び個所が存在するというお粗末ぶり…。 対応の悪さはともかくとして、その原因だけはきちんと突き止めてほしかったところです。 直さないまでも、「どうしてこういうことになったのか」ということを把握しておくことは、これから先に同じ問題を起こさないためにも必要なことですし、それをするかしないかが優良なメーカーか否かの違いではないでしょうか。 結局、この後もたまに音関係のトラブルが発生するソフトが出てきていることからも、大した調査はしていないことが伺えます(おそらく同じ原因ではないでしょうが) 「音」のコナミはもう昔の話ですね…。
この欠陥品の発売後、それまでとはうってかわって「悪魔城年代記」シリーズを続けることに難色を示し始めたのは知っての通り。 理由は「ユーザーからの要望が少ない」からだそうです。 さて、ここで考えてみてほしいことがあります。 「悪魔城年代記」最初の作品がこのような出来損ないの欠陥品で、音飛びに対してもまともな対応も謝罪もしない、ユーザーを舐めきったものでした。 果たしてユーザーは今後も続けて欲しいと思うでしょうか? 仮にこの欠陥品が何のアレンジもなく、それこそ完璧に移植されていたとしたら、結果は全く違うものになっていたはずです。 旧ファンの多くを納得させ、今後も続けて欲しいと思わせたに違いありません。 口コミによって、離れていたファンも呼び戻せたかも知れません。 そして、理由として挙げた「ユーザーからの要望」も多数寄せられたことと思います(私も、もし出来が良ければ続編の要望を出すつもりでした) 要望が少なかったのは、制作側の思い入れもへったくれもない、ましてややる気さえ感じられない姿勢が招いた結果にほかなりません。 それを「要望が少ない」とユーザーに責任を押し付ける短絡的思考は、常識を疑ってしまうほど身勝手です。 良いものを出さなければ続編の要望など返ってはきません。 こんな当たり前のことすら分からないのでしょうか? 何にせよ、一つだけ明確なことがあります。 もう、離れていったファンを呼び戻す機会は永遠に失われてしまったということ…(その後の行動を見れば、呼び戻す気なんて初めからなかったのは明白ですが)
小島文美氏がデザインを担当したということで、やはりこれは「月下の夜想曲」ファン向けに作られたもののようです。 それに関しては悪いとはいいませんが(良いともいいませんが)、「シモン=ベルモンド」というキャラクターをここまで変えてしまったのはいかがなものかと思います。 説明書とともにオリジナル版のイラストも同封されているのですが、そこに描かれているシモンはいかつい顔に筋肉隆々の身体、髪の毛も茶色で少し長めといった、まさに戦いにのみ邁進する戦士の風貌なのに対し、赤い長髪に黒のレザージャケットを着込んだ色白で線の細い美形という、ビジュアルバンドのメンバーにしか見えない しかし、当時店頭に貼られていたポスターはそれ(赤髪ホモン)のみで、オリジナルは影も形もありませんでした。 キャラクター(イメージイラスト)は今の時代、重要で外せない要素の一つになっているのでしょうが、あまりの変化のしようにしばし呆然とその場に立ち尽くしてしまいました…。 ←BACK |